働く場所も働き方も、そして暮らし方や生き方までもが、かつてより自由になり、都市・地方に関わらず自分のやりたいことを自分のペースで実現する人が増えている昨今。
常日頃から「多摩はポテンシャルしかない!」と思っているけやき出版の周りには、熱い思いを持って自分らしい道を切り拓く若い人たちも存在感を放っています。
これまではそんな多摩の魅力を‟多摩発”で伝えてきましたが、新たな視点、例えば東京23区で働く・住まう人の目線から紐解いてみると、多摩の魅力ってなんだろう…?どう表現するとより多くの人に伝わるのだろう…?そう感じたことが刊行のきっかけでもあった書籍『青い東京』。
先日、編者であるセイタロウデザインの皆さんと共に、下北沢「B&B」で12月3日(水)に開催した刊行記念イベントの一部をお届けします。

書籍『青い東京』とは?
BALL.WEB MAGAZINEをご覧の方にとって、改めての説明は不要かもしれませんが、「多摩エリア」とは東京都23区以外の30市町村のこと。
東は若者や観光客でにぎわう繁華街・吉祥寺、そして西は町域の約94%が森林という圧倒的な自然環境に恵まれた奥多摩町まで、約430万人が暮らしているエリアです。「エリア」や「地域」でひとくくりに呼ばれてはいますが、その特徴や魅力は一言では言い表せません。
そんなひとまとめにできない多摩で生きる人たち、働く人たち、自分らしさを地域で活かす人たちの中でも、特に率先して動くことで地域に良い影響を与えている、魅力あふれる8組の若者たちにインタビュー。東京の第一線、そして世界で活躍するセイタロウデザインが編集したのが書籍『青い東京』です。
青い東京▶https://keyaki-s.co.jp/detail/aoitokyo/
“多摩で生きる”を再発見する夜
──下北沢B&Bで語られた、多様な生き方と土地のポテンシャル
イベントに登壇したのは、セイタロウデザインのクリエイティブディレクター・山﨑晴太郎さん、プランニング・コピーライティング担当の松本慎平さん、デザイナーであり本書ではディレクションも担った斉藤千奈津さん、そして弊社代表の小崎奈央子。
書籍の中で紹介をさせていただいた方々も交えたクロストークを行いながら、多摩という土地のポテンシャルや魅力について多角的な議論を交わしました。

「多摩をデザインできれば、どこでもデザインできる」
晴太郎さんが冒頭で語ったこの言葉は、『BALL.』Vol.2に掲載したインタビューの中でも出きたもの。当時同様に「東京は第2都市すらデザインできていない。多摩がデザインできれば、どこでもデザインできる」という考えを、この日集まった参加者の皆さんにも投げかけました。
そして、役者が役作りをするように“地域の思いを憑依させながらデザインする”話から、現代社会における‟タグを付けないと不安”という文化への批評まで、話題は多岐にわたりました。
「社会がタグをつけすぎている。でも多摩は全部を受け止める度量がある」
東京23区とは異なるロジックで動く多摩の人たち、そして多様な働き方が許容される余白がある多摩という場所。その独自性こそが、多摩の最大の可能性だという指摘に、参加者も深く頷いていました。
そんな晴太郎さんの貴重な思い・考えを知ることができるイベントの様子は、2026年3月5日(木)までアーカイブ配信で見ることができるので、詳しく知りたい方はぜひチェックしてみてください!
▼アーカイブ配信
https://bbarchive251203a.peatix.com/view
「魅力を言葉にできない。それが多摩の魅力」
晴太郎さんの思いを受けてこう切り出したのは、弊社・小崎。『青い東京』を共につくった小崎は「多摩を上手く説明できないことこそ魅力の証拠」「総括できない土地。それが悪いわけじゃない」などと語り、誰よりも深い多摩愛を持ってイベント会場を盛り上げました。
そして、「多摩では複数の肩書きを持つ人が多く、23区の“本業の派生としての副業”とは違い、重ねることで新しいキャリアをつくる“複業”が自然に生まれる」と指摘。
『青い東京』でインタビューを行った人たちにとっては当たり前でも、東京23区で働く人たちにとっては目からウロコだったかもしれません。
もちろん、地域差ではなく個人差な部分も大きいですが、特に多摩では副業(複業)を経済的な向き合いではなく、生き方としての時間の向き合い方で行っている人が多いかもしれません。
「それってどういうこと…?」と思った方はぜひ!『青い東京』をご覧ください!(笑)
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イベントで語られた、多摩で働く若い世代のリアルな声
ゲストとしてイベントに参加いただき、書籍の中でもご紹介しているスミダさんは、実践的な講座が揃うデジタルクリエイター育成スクール「デジタルハリウッドSTUDIO立川」の新規開校から携わり、内装デザインや運営を一手に引き受けてきたマネージャー職として勤務している人物。彼女曰く、多摩は「何重にも自分を大きく見せなくていい。等身大で働ける場所」。都市部特有の“肩書きの重さ”から解放される感覚があると語りました。
同じくゲストで参加いただいた平槙さんは、「もし食いっぱぐれても自分でどうにかできるキャリアを描ける場所」だと表現。
平槙さんは武蔵境にあるマイクロブルワリーで、クラフトビールの醸造責任者として勤務していますが、毎日ビールを造るだけではない生活を送っています。例えば、ある日は、突然受けた連絡を機にゆずを取りにあきる野市へ行き、その日やるべきだった仕事を自由に夜にスライドすることも。小さな会社だからこそ仕事のやり方を自由に変えられるし、経営にも関われる。そして地域のつながりを通じて新しい仕事が生まれることを実感している。会社員でありながら仕事を自分でクリエイトできるから、‟自分でどうにかできるキャリアを築ける”のだと自身の仕事を振り返りました。
公園緑地、企業緑地、民間緑地、ビオトープなど、身近な自然環境の保全をサポートするNPO birthで公園管理などに携わる今野さんは、「自然と住宅地の近さが、多摩の最大の価値」だと話し、都市機能と自然環境が隣り合う距離感が、仕事と暮らしを長く続けられる理由だと話しました。
本をつくったことで気づいた制作者の思い
編集・デザイン担当の斎藤さんは、本の制作を通して得た気づきをこう話しました。
「多摩を説明するキーワードを4つ見つけた。でもひとつだけを取り上げても“多摩”にならない。並べた時に初めて姿が見えてくる」
今まではロールモデルが少なく、自分の働き方のイメージが持てなかった彼女が、インタビューを通じて多摩で働く人たちのリアルに出会い、価値観が開かれていった過程も印象的でした。
松本さんは、本という“個人的に読むメディア”だからこそ、キャッチコピーに収まらない複雑さを書き込めたと振り返ります。そして本書のタイトル‟青い東京“は松本さんの閃きから名付けたもの。取材を重ねていくうちに、ふと浮かんだ「多摩は東京のブルーオーシャン」という言葉と、若者=青春から連想した‟青“で多摩を表現したいとの思いを込めたそうです。
そして、晴太郎さんは最後に一言、「純度が高いまま形にできた」と総括。
「取材や打ち合わせを経てデザインに落とし込むと、その思いは薄まることが多い。でも今回は純度の高いまま本にできた」と語り、地域の思いや個人の価値観を丁寧にすくい上げるプロセスが、彼にとっても新しい体験だったといいます。
“分からないまま始められる”ことが多摩の価値

今回の書籍刊行とイベントを経て私たちが強く感じたのは、「多摩には分からないまま始めても許される余白」があるということ。
ロールモデルが整っていなくても、肩書きがはっきりしていなくても、まず動きながら形にしていける。その過程にこそ、多摩の魅力がある──今回の対話は、そのことを何度も示してくれました。
そしてイベントの最後、小崎は次のように締めくくりました。
「30市町村をくまなく愛してきた。これからは23区にも、多摩の魅力を伝えていきたい。多摩で働く若い人をひとりでも増やしたい」
今回のイベントは、本書を通じて“多摩で働くこと、生きること”の豊かさを改めて確かめる、温かく濃度の高い時間となりました。
この夜の対話が、そして、『青い東京』が、まだ多摩を知らない誰かの「生き方の選択肢」をそっと広げるきっかけになればと願っています。
ご参加いただいた方々、ありがとうございました!
イベントの様子は2026年3月5日(木)までアーカイブ配信中です!見逃したという方、もう一度見たいという方は、ぜひチェックしてみてください!
▼アーカイブ配信
https://bbarchive251203a.peatix.com/view


