リブランディング・コンサルタントである“あきねぇ”こと藤田昭江。
BALL.で『ブランディング相談室』の連載をスタートした“あきねぇ”ならではの視点で見る、あのお店のリブランディングPOINT!
府中市で約50年の歴史を持つそば屋「寿々屋」の3代目
西武多摩川線の是政駅を降りると『寿々屋』はすぐに視界に入ってくる。
府中市で昭和39年に開店し、約50年の歴史を持つ寿々屋のお洒落な入口は「神楽坂にでも来たんだっけ…?」と思ってしまうほどの雰囲気。
寿々屋3代目の鈴木朗之さん。
府中にある親子カフェkotocafeの異業種交流会で出会った。
持ち時間30秒の自己紹介タイムで「是政で蕎麦屋やってます。」しか言わない。
多めに見積もっても10秒…なんと控えめな!笑
すぐに打ち解け、気が付いたら『スーさん』と呼んでいた。
そんなスーさんは、挨拶は短いけれどみんなから慕われ、場に馴染む。
生まれてからずっと、お蕎麦屋さんという家業を肌で感じてきたからなのか?
笑顔がなんとも素敵で親しみやすい。
今回はそんなスーさんに取材してきましたよ〜!
スーさんになにか質問すると、本当に楽しくユーモア溢れる返事が返ってくる。
そしてとにかく返事が『早い』。
ラリーに例えて言うなら、テニスじゃなく卓球のスピード。
(ん??伝わる??笑)
最初に聞いたのは、子どもの頃家業が好きだったか?
するとスーさん、
「自分の苗字が好きか?と同じかも。鈴木が好きか?って聞かれても…
全国1位くらいの苗字なんでね(笑)」
さらには
「水飲むの嫌いですか?みたいな。
水飲むのは好きでも嫌いでもないっていうのと一緒。」
スーさん、この例えを出すまでの速さが半端ない。
卓球で言うところの、スマッシュです!(分かりづらい?笑)
ここで感じたのは、家業が好きかという問いはどこかでずっと向き合っていた事なのかもな、という事。
どこかで漠然と、2代目たちは向き合い続けている課題ですよね、きっと。
取材をして、3代目としての気持ちを『語っている』と感じられたのが、子どもの頃の夢だった。
小学6年生のスーさんは、卒業文集の将来の夢に『屋台を引いている蕎麦屋』と書いていたそう。
リスペクトはあるけど『屋台』というのは、子どもなりの小さな抵抗なのか?
だけど結局蕎麦屋と書いている…
やってみたいという気持ちと、家業を継ぐことの恥ずかしさが行ったり来たりしている鈴木少年を何とも愛おしく感じてしまった。
料理は土台。社会学部で学んだ分析という武器。
スーさんは18歳でお蕎麦屋さんに入りながら、20歳の時から2年間ほどサラリーマンを経験している。
そして24歳の時に大学に通い出す。
なぜ大学に?と聞くと、何かもう一つ武器を持ちたかったとスーさん。
料理という武器は土台。だけど、『何かもう一つ武器を持ちたい』という気持ちが日に日に強くなり、社会学部で分析について学んだ。
元々心理学が好きで、突き詰めると人。そして人が生活するのは社会。だから人を見る前に社会をみたいと思った。
「統計調査ってすごいと思うんです。今を切り取ると次に何があるかがわかる。だって、過去の連続が今じゃないですか?」
なるほど。
この『過去の連続が今』と言うセリフ。3代目から聞くと重みを感じる。
親から引き継いで継承していくことは、自分だけじゃなく先代からの時が積み重なっている…
簡単なことではないけれど、なんだかとても素敵に感じた。
変えるということよりもまず『作る』
そして、私はリブランディングの際に軸にしている考え方として
『ステイ&チェンジ&ビルド』があるとお伝えした。
すると、スーさんはこの時ばかりは少しスピードを落とし、テニスのスピードでラリーを戻してきた。
「ステイ&メイク&ビルドじゃないかな?」
ふ…深い…
今まで『チェンジ』と言ってきた私は、『メイク』に置き換えたその言葉を理解しようとフリーズしてしまった。
そんな私にスーさんは、
「作っているものは変わるけど、変えるということよりも『作る』という方が先に来る。」
そう補足してくれた。
何を変えていいか、何を変えていくかの取捨選択がすごく難しいと言う。
じわりじわりと、3代目としての言葉が沁みた。
とは言え…何か変えたことは無かったですか?と、食い下がる私。笑
すると、時代に合わせたリメイクはしたのだそう。
それまでは全面喫煙OKだったのを禁煙にし、入口脇にスモーキングルームを作った。
このご時世でも、喫煙者を排除するのではなくて共存したいとの想いがあったと言う。
他にも共存を意識しているそうで、
寿々屋では『占い講座』や『酒と宇宙と…』というイベントなども積極的に開催している。
この『酒と宇宙と…』は私も大ファンで、かなり大真面目にすごい先生が星や宇宙のことを教えてくれるのだけど、それを老若男女が入り混じってお料理や日本酒を楽しみながら聞くというイベント。
もう後半は、酔ってくるし話が壮大だしで、心地のいいカオスな空間になっていく。
(注:褒め言葉です。)
別の環境での挑戦。継いだものを広げていく。
今後の事業展開について聞くと、キッチンカーなども視野に入れているスーさん。
受け継いだものを止めるのではなくて広げていく。
店に来てもらうだけじゃなく持っていく、そんな構想を練っているのだとか。
「店で作ったものは雰囲気だったり、整った環境の中での提供です。
今あるものを違う場所に持っていって、どうですか?と試したい。」
鹿もね、あ、違った…シカモね、
このキッチンカーが蕎麦じゃないってんだから、驚き!
そんなバーガーな、あ、違った…そんなバカな話があるのかい?!
(ヒントは↑に隠れています!笑)
これは今後が楽しみですね♪
残すことのストックは結構あるけど、ストックをさらに増やす段階ということで、
3代目の積み重ねは、確実に『メイク』されています。
最後に、スーさんに聞いてみました。お蕎麦は好き?
「嫌いです。まぁ、嫌いというのは言い過ぎかも知れませんが、正直好きじゃないですね。
大きな声では言えませんが、好きなのはイタリアン、ペペロンチーノが大好きです。」
ウッソーん!!!びっくりですよ、私は。
でもね、スーさんはやはり卓球のスピードでラリーを返してくれた。
「そこが面白いのかも…アバタもエクボじゃなくて、嫌いだからアバタはアバタなんです。」
嫌いだからこそ、冷静な目を持ってやり続けられる。
なるほどなぁ…言い得て妙、と納得してしまった。
寿々屋のスーさんリブランディングPoint!
①チェンジじゃなくてメイク
②共存を意識して常連も新規も大切に
③アバタはアバタ、だから面白い
DATA
そば酒庵 寿々屋
月〜土11:00~14:00、17:00~20:30 日・祝11:00 〜 19:30/木曜定休日/府中市是政5-7-25 ラベーラー是政/西武多摩川線是政駅徒歩1分/042-361-3834
http://soba-suzuya.jp/
藤田昭江(ふじた あきえ)
『アナタノ名刺、ダイジョウブ?』と書かれた名刺を配り、愛のある鞭で斬っていくスタイルでインパクトを残すリブランディングコンサルタント。2 代目社長研究家の肩書も持ち『2 代目が元気になると日本が元気になる!』を掲げ≪ 2 代目スナック≫も定期開催中。
http://dou.annibirthcolor.com/