リブランディング・コンサルタントである“あきねぇ”こと藤田昭江。
BALL.で『ブランディング相談室』の連載をスタートした“あきねぇ”ならではの視点で見る、あのお店のリブランディングPOINT!
コミュニティを生むブックカフェ「マルベリーフィールド」
JR青梅線の中神駅を降り立って、1分も歩けば
≪マルベリーフィールド≫はある。
店主の勝澤さんとの出逢いは、実はこのBALL.がきっかけだった。
地域の人たちが集まる交流会、「BALL.BAR」で同じテーブルを囲んだご縁。
「今度、お店に遊びに行ってもいいですか?」
そう言うまでに、ほとんど時間はかからなかった。
マルベリーフィールドの魅力は、勝澤さんのお話からすぐに伝わり
まだ見ぬお店を勝手に想像して、ワクワクした。
降り立った中神駅周辺は、お世辞にも栄えてはいない。
私の住む武蔵境から電車で25分程度。 同じ「東京都下」のまちでも、雰囲気はまったく違う。
勝澤さんのご両親の店舗「かつざわ書店」は、今のマルベリーフィールドから2、3分のところにあった。
2008年に、ご両親が経営していたこの書店が今のマルベリーの場所に移転する計画が持ち上がり、そのタイミングで勝澤さんが事業を引き継ぐこととなる。
そのころ勝澤さんは、コンサルティングの仕事に興味を持って勉強を続けていた。
10年以上のサラリーマン経験の中で出逢った、会計士の仕事に興味を持ったのがキッカケだったそうだ。
しかし、勝澤さんは勉強をしながらこう思った。
「実際に事業を成功させた実績のない人間に指導されても、耳を傾けてくれる人がいるのだろうか??」
そして「自分で成功体験を作ろう」と考えていた時、図らずもそのタイミングで事業承継となった。
縁って、きっとこういうものなのだろう。
両親との事業引き継ぎは5年以上かけて行った。両親が作り上げてきた「かつざわ書店」がまちの人々からの信用が厚かったので、その信用力を大切に、新規事業にシフトさせていった。
今の店舗に移転し、4、5年後にカフェ併設となったことで、本屋「だけ」では難しかった地域のコミュニティスペースとして活用されていく。
カフェを併設したのは、大型書店が近隣に増えたことや、インターネットなどの普及によりまちの書店経営が厳しくなってきたのが最大の理由。
そして、新規に書店を始めるのは現在では難しく、新刊を販売する書店にカフェを併設すれば「模倣されづらい強みになると思ったから」という勝澤さん。
単なるカフェではなく、コミュニティの場への想いや長年にわたり地元に愛された書店の残り香が「心地よさ」になっているように感じ取れた。
「飲食で利益が出始めたから、好きな本を置けるようになりました。」
本当に、好きな本を並べているのだろうなぁ… と
すぐに納得できるほどに個性的で魅力的な本の数々。
\\あぁやめて〜!買いたくなっちゃう!!//
こんなセリフが出てしまうほどに、
魅力的な本ばかり…ゴクリ。
ここに至るまでについていろいろと質問すると
苦労や工夫を重ねてきたことが見えてくる。
カフェは利率が高い。
だけど、回転率が悪い。
…それは、仕方ない。
だって、居心地いいんだもの。
居心地よすぎるもん、勝澤さん。笑
って、あ、笑い事じゃない。
そう、笑い事じゃなく勝澤さんは策を練った!
それが、このサンドウィッチ。
勝澤さんの「勝つサンド」
見てください!
「勝つサンド」の文字を!
回転率に負けないぞ!の気合いが見受けられます!!
(いや多分、勝澤さんの名前から取ったんじゃ…)
見てください!
美味しそうなこの断面を!!
店内に入らずに外から購入できるのもポイント。
フラッと買いに行けるのは助かりますね。
譲りたい古本にお客さんがおすすめポイントを書く「まる文庫」
そして、勝澤さんが仕掛けたことのもう一つが「まる文庫」。
お客さんが「譲りたい本」にメモをつけ、マルベリーに置いていく。
お勧めポイントを自由に書いて、手にした人がそれを読む。
そうすると「単なる古本」が息を吹き返す。
持ち主にとっても、手放す時に「思い出を読み返す」
そんな機会にもなったのかもしれませんね。
まちに暮らす方々のコミュニティスペースになりたい
本というツールを介して、まちに暮らす方々のコミュニティスペースになりたい。
そんな想いで始まったこの企画でしたが、管理作業が煩雑で今はお休みしているとのこと。
ただ、コミュニティスペースとしては、お店の地下がその役割を引き継いでいる。
≪カフェサイドギャラリーM≫というスペースを2019年にオープンした。
この場所を借りて、ワークショップや個展を開催出来たりマルベリーが主催する≪大人の教養講座≫ というイベントも開催されている。
本の著者を招くイベントもあるというのだから、本好きにはたまらない。
マルベリーフィールドのリブランディングPoint!
①「本屋」を主軸にコミュニティを生み出した
② 新しい事業をガッチャンコした
③ 無難から脱却してファンをつかんだ
斜陽産業なんて言葉が多く使われる時代ですが残念ながら、本屋もその一つでしょう。
それでも、カフェを併設したりリブランディングして成功している人もいる。
そう思うと、オシゴトってオモシロイ。
最後に、勝澤さんから送られてきたサンドウィッチの「挟まれる前」。
今気付いたけど、四角いものがお好き…??笑
DATA
ブックカフェ マルベリーフィールド
月〜金7:00〜18:30、土日11:00〜18:30/無休/昭島市中神1176-36/JR青梅線中神駅徒歩1分/042-544-3746
ttps://mulberry-field.com
藤田昭江(ふじた あきえ)
『アナタノ名刺、ダイジョウブ?』と書かれた名刺を配り、愛のある鞭で斬っていくスタイルでインパクトを残すリブランディングコンサルタント。2 代目社長研究家の肩書も持ち『2 代目が元気になると日本が元気になる!』を掲げ≪ 2 代目スナック≫も定期開催中。
http://dou.annibirthcolor.com/