角川武蔵野ミュージアムで知的好奇心が大爆発!(前編)

角川武蔵野ミュージアムで知的好奇心が大爆発!(前編)


 桜の花も満開になり、春の訪れを感じさせる今日この頃。自然と気持ちも軽やかになり、外に出て何か新しいことをしたくなりませんか?

 桜が楽しめて、知的好奇心もくすぐられる場所……そんな2つの欲求が満たされる場所を求め、BALL.編集部の新人コンビMとIが、多摩エリアに隣接する東所沢の「角川武蔵野ミュージアム」へ遊びに行ってきました!

 JR東所沢駅から歩くこと10分、桜のつぼみが膨らみだした東所沢公園を抜けると、左手にのぼり旗がはためく「武蔵野坐令和神社」、右手にまるで磐座(いわくら)のような巨大建造物が姿を現します。

「アニメ聖地88」一番札所インフォメーションスポットにも選定されている、近代的な神社。
で、でかい。

 

「メディアミックスのKADOKAWA」ならではの複合文化施設

 角川武蔵野ミュージアムは、KADOKAWAが運営する「ところざわサクラタウン」のランドマークとして、アート、文学、博物のジャンルを超え、あらゆる知を再編成した複合文化施設。世界的な建築家・隈研吾氏がデザインを監修した高さ30メートルの巨大な建築は、地中から地殻が噴きだす様がモチーフとなっています。

来館者を迎えてくれるのは、鴻池朋子氏の「武蔵野皮トンビ」© 2021 Tomoko Konoike (2022年4月4日まで展示)

 下から見上げると、想像以上のド迫力! 1つ50~70kgある花崗岩を約2万枚使用しているそうですが、一つひとつ色や質感が違い、まるで動物の鱗のよう。建築物というより、生き物としての力強さを感じます。

 隈建築の中でも石を使ったものは珍しいそうで、独特なフォルムも相まって、見る角度や光の加減によってまったく違う印象に。正面からのゴシック調、水面に映る姿、裏(EJアニメホテル側)から見たクールな姿……。建築デザインには疎い筆者ですが、ものの10分ですっかり魅せられてしましいました。

 外からは中がどうなっているのかまったく想像がつきませんが、実は5階建で、図書館と博物館と美術館が融合した、他には類を見ない複合文化施設となっています。いまや定番となったメディアミックス手法を最初に取り入れたのはKADOKAWAですが、そのリアル版といえそうです。

2階のメインエントランスでも現代美術作品が楽しめます。 大小島真木/綻びの螺旋/© 2021 Maki Ohkojima Courtesy of Kadokawa Culture Museum
日本人とオーストラリア人のアーティストユニット・米谷健+ジュリアの「ウルトラブッダ」 © 2010 Ken+Julia Yonetani

 

エディットタウンは本好きの楽園

 さて、まずは館の目玉ともいえる4階のエディットタウン「ブックストリート」へ。

本棚も隈氏のデザインで、書院造の「違い棚」をイメージしてつくられたそう。

 こちらでは、「記憶の森へ」「脳と心のメディア」「むつかしい本たち」といった計9つのテーマに沿って、同ミュージアム館長で編集工学者の松岡正剛氏監修により選ばれた約2.5万冊の本が並びます。

 例えば「男と女のあいだ」コーナーでは、細胞やゲノムの本から始まって、動物→サル→思春期→エロスときて、最後はジェンダーといった具合。ランダムに並んでいるように見えて、実は隣り合う本にはすべてつながりがあり、連想ゲームのようになっています。

ブックストリートに並ぶ本は、松岡氏の編集メソッドを学んだ選書チーム約50名によって選書されたそう。

「ここでは本がテーマごとに選書されて配架されています。学術書やマンガ、絵本など書籍のジャンルはさまざまですが、隣り合っている本は関連性があるものなので、『こういう本もあるよ』と次の本を提案してくれるんです」(同館広報の齋藤真由美さん)

 新しい本を探す時、前に読んだことがある作家の本ばかりに目がいってしまったり、同じようなジャンルの本ばかり読んでしまいがちな筆者ですが、ここでは予期せぬ本との出会いから新しい世界が広がる楽しみを味わうことができます。

 本はブックストリート内ならどこでも読むことができます。アンティークの椅子でゆっくり読書もおすすめです。

 一生かかっても読み切れなさそうな本の量に圧倒されてしまいますが、定期的に通いたくなりますね。

 

「本棚劇場」という名の知の大海

 そして、ブックストリートの奥に現れるのが、かの有名な「本棚劇場」。

「本棚劇場」は写真撮影OK(動画はNG)のため、映えスポットとしても人気。

 高さ約8m四方の巨大本棚にはKADOKAWAの刊行物と、創業者である角川源義氏の蔵書のほか、著名な文芸評論家や学者など、角川書店創業時に縁の深かった人たちから寄贈された本が約3万冊所蔵されています。

 360度本で埋め尽くされ、知の大海に飲み込まれかのようなこの陶酔感……本好きにはたまりません! 

 人間の脳の構造をイメージしているそうですが、記憶と記憶がつながっていくように本を読みつなぎ、世界を読み解く――。ブックストリートのコンセプトが凝縮された、どこか神聖な雰囲気を漂わせる異空間に、ただただ圧倒されっぱなしでした。今回は開館直後で誰もいなかったこともあり、よりダイレクトに脳を揺さぶられた感じがしました。贅沢!

 さて、ストリートの左右にはひとつずつ部屋があり、入口から向かって右手の「荒俣ワンダー秘宝館」は、想像力やアニマ(生命や魂)の見せ方にこだわった、博物学・妖怪研究家の荒俣宏氏監修の空間です。

子どもにも大人気のエリア。

 博物館はもともと「驚異の部屋」(ヴンダ―カンマー)といって、中世ヨーロッパの貴族が世界の珍品などを集めた小部屋を作ったのが始まりだそうで、部屋の右側は常設展としてさまざまなコレクションを展示。マンモスの牙、昆虫標本など、世界中から集めた珍品が並んだ「半信半疑の地獄」と、化学と芸術の融合を体感できる「生命の神殿」で構成されています。大半は荒俣氏の個人コレクションですが、一部は他の博物館から借りているものもあり、まさにカオス。荒俣ワールド好きにはたまりませんね。

部屋の左側では、荒俣氏監修の特集展示「不自然(マンメイド)な植物展」を開催中(~7月31日)。

 その反対側にある「エディットアンドアートギャラリー」は、現代アート作品を中心にさまざまなジャンルの作品を展示するギャラリー。現在は「コロナ禍とアマビエ 6人の現代美術家が『今』を考える」が開催中(~5月8日)。1年間にわたり、6人の作家たちがリレー形式でアマビエをテーマにした作品を館内外に展示するというプロジェクトの集大成として、この場に一堂に会しています。

 外壁にあった鴻池朋子氏による「武蔵野皮トンビ」もこのプロジェクトの一環で、牛皮の上に水性塗料とクレヨンでペイントされた作品が1年間、雨風の影響を受け、変化していく様子が楽しめるアート作品となっています。

 見どころ満載の角川武蔵野ミュージアム。後編では、「マンガ・ラノベ図書館」、現在開催中の「浮世絵劇場 from Paris」をご紹介します!

 

●角川武蔵野ミュージアム
KCM スタンダードチケット(本棚劇場含む):一般1,200円、中高生1,000円、小学生800円
マンガ・ラノベ図書館:一般600円、中高生300円、小学生200円
浮世絵劇場 from Paris:一般2,200円、中高生1,800円、小学生1,100円
公式サイトhttps://kadcul.com/

 

 

 

 

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