「自ら燃える人」=自燃人を育てる つばさホールディングス 猪股浩行代表取締役

「自ら燃える人」=自燃人を育てる つばさホールディングス 猪股浩行代表取締役

インタビュアー:小崎奈央子(けやき出版代表取締役/立川市)

けやき出版が運営するグランデュオ立川3Fの情報交流拠点「BALL.HUB」での出会いをきっかけに、規模は違えど同じ地域を想う会社として弊社がシンパシーを感じているつばさホールディングス(https://tsubasa-holdings.co.jp)。今回、弊社代表・小崎とつばさホールディングスの猪股代表と対談をさせていただくことに。地域への想い、社員への想い、これからの社会への想いを伺いました。

つばさホールディングスの理念:自燃人とは
経営とは常なる革新、事業はすべて再構築
人が人にしかできないサービスを追求

つばさホールディングスの理念:自燃人とは

小崎)つばさホールディングスでは、掲げる目標「経営羅針盤」を運営していくにあたり、社員に共通した方向性を示すために、2020年12月に冊子「つばさレシピ」を作成しました。ここに、自ら燃える人=「自燃人(じねんじん)」という言葉が出てきます。「自燃人」という言葉を社員の人物像に設定された理由や、いきさつを教えていただけますか。

猪股)自ら燃える「自燃」に「火」がつかないと「自然」になります。さまざまな見方があるとは思いますが、人は本来みんな成長したいし、もっと良くなりたいと思っています。それが自然なんです。

私たちの「自燃」の定義というのは、常に「自らやろう」と燃えて一歩足を踏み込み、自分のみならず周りの人も良い方向に巻き込んでいけるような人たちのことを、そう呼んでいます。

小崎)言葉のイメージがすごく強いですよね。つばさレシピの中には「可燃人」「不燃人」といった言葉なども出てきますが、「自燃人」になる一歩手前の人への教育・アプローチはどういったことを意識されているのでしょうか。

猪股)私もそうですが、生まれた時から常に自燃人ということはなくて。調子の良い時は自燃人でいられても、自分自身がどこかで「なんで俺ばっかり」とか「どうしてこうなっちゃうんだ」と思うような…自分でも分からないうちに「不燃人」になってみたり「消燃人」になってみたり。おそらく人がずっと自燃人であり続けることは、なかなか難しいんじゃないかなと思うんですね。

小崎)なるほど。周りの影響も大きいですしね。

猪股)一番大切なのは、どういう環境を自分たちが望むのか。
「その環境がない、何かがないからできない」ではなくて、自分たちで理想とする環境を作っていけるかだと思うんです。

自らどうすればもっと楽しくなるのか、心が豊かになるのか、人として成長していけるのか? をそれぞれが考えながら議論する。方向性も含めて、考えて決めていける人がいれば素敵じゃないですか。

小崎)コロナ禍で二極化というと極端かもしれませんが、守りに徹しすぎて身動きできない企業もあれば、逆にこの状況を打破しようという企業もありますよね。

猪股)私たちが生きている中でこのコロナ禍は初めての経験ですが、歴史的には今のインフルエンザがスペイン風邪で3~4年くらい尾を引きながら、世界中を巻き込んだような時があったと思います。

どの時代であっても激動の中で、今までの仕事もどんどん変わっていくんだと思うんです。「自燃人」のキーワードにもかかってきますが、今あるものが永遠に続くことって、おそらく何一つないのです。

小崎)本当にそうですね。

猪股)私自身昭和44年に生まれ、高度成長期に小学校~中学校、社会に出る手前くらいからちょっとバブルがはじけています。

今、多くのものがカオスになり、先が見えないような環境の中でみんなが模索し、何が正解か間違いか、答えがどこにあるかを探しています。ですが、おそらく答えはどこにもなく、結局何のためにということが重要です。

私の子どもが、ちょうど新卒の学生さんたちと同じ年代なんですよ。コロナ禍でも、意外と若い人は冷静に捉えています。

経営とは常なる革新、事業はすべて再構築

小崎)社員のマインド、スキルは想いでどうとでもなりますが、本人に火がつかないとどうにもできない部分が大きいですよね。「自燃人」という言葉には本当にインスパイアを受けました。

猪股)経営していると思い通りにいかないことばかりです。どうしようもできないが、放置もできない─それを「どうやって楽しむか?」に変換できるかできないか、がすべてだと思うんです。

小崎)その境地に行き着き、どうやって切り替えられるようになったのでしょうか。

猪股)自分の場合は全部が必然でした。人に出会って、必然で社長をやったり、必然でお仕事をいただいたり、必然で社員として出会ったり、必然で別れたり。こっちには一緒にやりたいという気持ちがあったとしても、受け取り方は十人いたら十通りです。

そうすると、相手はこちらが思った通りに受け取ってくれない場合が多くあります。 でも、相手がそう思ったという事実は変えられない─それは違うと後から言ったとしても、自分が未熟だったと思うしかないのです。

小崎)伝えられなかったということでしかない、ということですね。

猪股)そうです。そう考えると、こんなに人として成長できる職務もありません。
昭和の時代だと、稼ぎたいからとか物が欲しいからとか、そういう風(良いように)に見られたいからとか、 “我欲”みたいなものもありました。

「良い」「悪い」ではなくて、それがモチベーションでもやってこられたのです。しかし、今はもう時代背景が違っています。

人口も縮小していくし、右肩でマーケットも上がっていかない。非常にシンプルに、本当のことがわかるようになってきているのです。SNSにしても何にしても、良いことも悪いこともみんながジャッジしてくれる─そういう時代です。

小崎)そうですね、嘘はつけないですね。

猪股)仮に嘘をついたと思っていなくても、嘘になってしまうこともあるだろうと思います。いろんなことを楽しむしかない。どうやって楽しもうか、というような思考です。
不安や恐れ、恐怖に縛られると何もできなくなるし、そうなると経営ができないですよね。
コントロールできない「この人、どう思っているんだろう」とか、「あの人、どう受け止めたかな」を考えていたら、何もできなくなってしまいます。

小崎)(社長という職務は)見える景色がやはり違う。遠くまで見渡せる分、近くが見えなくなる…しかしそれも、寄り添うためには近くを見ながら遠くも見ていかなければならない。私自身も「けやき出版」の代表取締役として苦労してきましたが、今、代表のおっしゃった「楽しむ」ということに、去年くらいに気づきました。自分が自分らしく、その状況をベストな形でやれば、みんながその動きに乗ってくれるということを改めて知ったんです。

猪股)「自燃」ってそういうことですよね。誰かに何かをやらせることってなかなかできず、コントロールできるのは自分の思考や意識、行動だけ。そうすると、そこに共感してくれた人が集まってくれます。そういう流れですよね。悩んで考えている時って、大体うまくいきません。

小崎)「自燃人」という言葉を思いついたきっかけはありますか。

猪股)取締役で参画いただいている角田識之さんが主催していた(経営者のための)塾で、私たちが目指す人材像として「共通言語」として使っていた言葉です。どうせだったらそういう思いをもった人が集まっていったらいいなと。
せっかくこの国に生まれて育ち、自分の子どももこの国で育つのであれば、自分たちが貢献できる事業を通していい国を作りたい、この国のためにやりたい。
人から見たら大きいことを言っているようだけど、一人ひとりがそういう想いをもっていたら、けっこうすごい会社なんじゃないかなと思ってるんです。

人が人にしかできないサービスを追求

小崎)代表として、どのように事業を捉えていますか。

猪股)車の販売もそうですが、ディーラーとかのビジネス内容もどんどん変わっています。過去あったものをそのままその流れにしていくのではなくて、もう一回ゼロベースから考え直しています。この先同じことをやり続けるのはマーケットも望んでいません。事業とはすべて再構築だと思っています。

小崎)さまざまな事業展開の中で、どうやって事業に注力していくのでしょうか。 経営理念的に共通なものがあれば、ジャンルが違っても変わらないものですか。

猪股)基本的に軸となっている事業が、労働集約型と言われるような「人が多い」事業が多いんですよね。テック系の企業だと、少数精鋭で利益の大きい事業が多いと思うのですが。

もちろん高利益の事業体質は目指していますが、例えば物流の仕事で分かりやすく言うと、トラックを一人で3台運転できる運転手はいない。物理的に無理です(笑)
一番大事なのは、ハンドルを握っているドライバーさん達がどういう想いでその仕事に携わっているか。そこに一番の価値があると思っています。

事業すべてに共通することですが、仕事は困った時こそ問題解決を目指したり、もっとこうしたいと考えることで新しいサービスを作ったりするものです。今あるものも、これから先に必要とされるものも、結局人が人にしかできないサービスです。

もちろんロボットやAIが発達してくればできることも多いのですが、そこに人が介在するということは、想いがあって温かさが伝わったりとか、いろんな困難がありながらも笑顔で対応してくれたりとか、そういうことが嬉しかったりするんじゃないかなと思うんですね。

今はさまざまな事業の前提がどんどん変わっていく端境期。政府が推し進めているDXの中で、極力事務作業はデジタルに変えていくとか、これから先、2024年問題という労働時間・働き方を変えていく大きな問題がある中で、そうすると経営としても多角的に考えていかないと。

国が考えている方向に舵を切りながら、一緒に働いている人たちがどういう想いで仕事をしていくかということを考えて、それぞれ輝いていくような職場を作っていかないといけないのではと。
決して今がそうだとは言っていませんが、それを会社だけではなく、社員と一緒に作っていくべきだと思います。

小崎)新人の方が経営理念をとても理解されて、自分も体感したいという思いを強くもってらっしゃいますよね。朝礼も頻繁にやっていらっしゃるのでしょうか。

猪股)朝礼は各部署で毎日行っています。日々、次から次へと「やらなければいけない目の前のこと」が出てきますが、何のためにそれをやるのか自覚する必要があります。
自分が輝くため、お客様に笑顔になっていただくためにやっているのです。それを確認するために、やはり朝礼は必要ですよね。

小崎)原点に立ち返ってブレないようにするということですね。

猪股)そうですね。

小崎)「つばさレシピ」にある「大家族主義(入社式が親御さんから引き継ぎ式)」というのはどうして掲げられたのでしょうか。大事なお子さんを預かるという想いでやってらっしゃるのかなと思うのですが。

猪股)親御さんが大事にここまで愛情をもって育ててくれた人たち=新卒の人たちにとって初めて入ってくる会社=社会です。 会社ってこういうもの、先輩ってこういう人たち…というのが、その人の常識になってくると思うんですよね。ですから、ちゃんと家族を迎えるような考えで受け入れたい、ということです。

小崎)昭島駅からすぐの日本最大級のショールーム「HDS」にも、もっと遊びに来てもらえたらいいですね。

猪股)そうですね。この場所は昭和飛行機様からお借りしている土地なんですが、2022年の1月以降、昭島市内に移転の計画になっていますので、ぜひ遊びに来てください。


<猪股浩行代表取締役経歴>

1969年 3月 新潟県新潟市生まれ。高校卒業後、民間企業へ就職。
1982年 2月 引越し事業を開始。
2011年12月 高栄運輸株式会社の経営に参画
2016年 8月 株式会社カーライフサービス多摩車両の経営に参画

*現職

つばさホールディングス株式会社 代表取締役
つばさロジスティクス株式会社 代表取締役
株式会社カーライフサービス多摩車両 代表取締役
株式会社多摩フードサプライ 取締役
エイチディーエス株式会社 取締役

HDS

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