Illustration:Kaoru Yamasaki
湯気からレモンの香り
5回目の広島県呉市現地レポートは、とびしま海道で出会った「レモンぜんざい」。一足早くとびしま海道を訪れていたBAAALLメンバーからその美味しさを聞きつけ、一同念願にしていたお楽しみの甘味です。意外にも簡単な作り方をご紹介します。(末岡新果園についてはこちら)
簡単で、特別な甘味
レモンぜんざいを振舞ってくださったのは、末岡新果園の末岡和之さん。ご自宅で作り方を教えてくださいました。まずはお餅をカットしてトースターへ。焼いている間に小豆をお鍋であたためます。
主役はレモン
ぜんざいと言えば、和菓子の代表である小豆や、日本のソウルフードとも言えるお餅がメイン。けれど、とびしま海道のレモンぜんざいはレモンが主役です。ほんの少し上にのせるだけで、立ち上る湯気にはレモンの香りが染み込み、小豆にも爽やかな風味がしっかりとつきます。調理は少し特別な方法。末岡さんが取り出したのは、冷凍庫で丸ごと凍らせたレモンです。鮮やかなレモン色が保たれたままの皮の部分を、おろし金ですり下ろして使います。皮まで安心して食べられる国産レモンだからこそできる、贅沢かつシンプルなレシピです。(冷凍レモンについてはこちら)
婦人部から生まれた驚きの味
調理を始めてからものの15分ほどで、あっという間に完成。レモンぜんざいにまつわるお話をお聞きしながら、とびしま柑橘倶楽部の皆さんと一緒にいただきました。(とびしま柑橘倶楽部についてはこちら)
『郷土料理というわけでもないですが、この辺りの農家さんは何にでもレモンやミカンをかけたり入れたりしていただくんです。酢の物も酢を使わずに、レモンで作ったりね。レモンぜんざいもそうやって生まれたんだと思います』
ぜんざい以外のレモンの使い方も教えてくださったのは、とびしま柑橘倶楽部の秦さん。香りと栄養の凝縮された皮まで躊躇なく使えるからこそ、新しい料理が生まれるのかもしれません。続いて末岡さんは、レモンぜんざいを初めて口にした時の思い出を話してくださいました。
『この大崎下島の大長地区では、毎年1月の最終土曜日に、宇津神社で“弓祭り”という初祭りがあります。厄払いの神事をするんですが、そこで婦人部がレモンぜんざいを振る舞うんです。初めて食べたときは、こりゃすごいわ思って、もうビックリでした』
大長地区のお隣、歴史的な街並みで観光地になっている御手洗のカフェでは、レモンぜんざいがメニューになっているそう。お店で出会えればもちろん嬉しいものの、自宅でもチャレンジしたくなる手軽で贅沢な甘味です。
Writing/國廣愛佳
Photo/寺島由里佳