もやもやしているひと、それがもやぴ。
もやもやしているひと、それは、力を秘めているひとー。
もやもやぴーぷる、もやぴ。
終末期医療こそクリエイティブ
これまで2回に渡り、もやぴ初のイベント「人生のはじまりと終わりを考えるワークショップ」の様子をお伝えしてきたシリーズも、今回が最終回です。最後のプログラムは、訪問診療専門のすまる在宅クリニック院長、吉川哲矢(よしかわてつや)医師から、終末期医療の現場についてお話を伺い、自分や身近な人の最期の時に向き合い、その時にどうありたいかを考えてみます。
前回までに、自己紹介ワークやお絵描き教室を通じて、人生の始まり、幼少期、過去を振り返ってきました。今度は未来、人生の最期を想像し、そして今日から先、これからをどうしていきたいかを考えてもらいたいというプログラム構成です。
すまる在宅クリニックが行う訪問診療は、通院がむずかしくなった方を対象に、病院と連携をしながら、診察や治療を行います。臨時的な往診と違い、定期的に、計画に基づいて訪問することで、普段の様子を知り、病院と連携することでより細やかな日常のケアを提供しています。
当初、外科を志望していた吉川先生ですが、家庭医療や緩和ケアの現場に関わる中で、誰にでも必ず訪れる死という事象を前に、本人がやりたいと思うことをなるべく実現してもらい、本人が亡くなられた後も、身近な人たちが笑顔で故人を偲ぶことができる。人生の質(Quolity of Life=QOL)の向上を助けることができる終末期医療は、実は最高にクリエイティブな仕事なのではないかと気づかれたそうです。
医師のもやもや
そんな吉川先生が、医療の現場で感じる医師としての「もやもや」は、この医療は、本人が本当に望むものなのか、そもそも本人(たち)は自分の見通し感をもっているのかということ。ありたい人生の過ごし方を支えたい。けれど、その前に、現状の健康や病気のこと、これからの見通しを分かったうえで、本人(たち)がどうしたいかを考えられているか。そして、本人や本人を支える誰かにしわ寄せがきていないかということを常に意識されているそうです。
そのため、本人や家族が、病気についてどう理解しているか、今後の希望、どんな感情を抱いているか、生活への影響、療養の環境、身近な家族・社会との関わり等について、お互いの理解をすり合わせることを大切にされているそうです。
そうすることで、住み慣れた場所や地域で、最期までその人らしく人生を全うするために、本人や家族、そして医療と介護が連携して本人(たち)の希望する過ごし方を支えることができます。
そして、人生の仕上げ=看取りについて。誰にでも、必ず訪れる「そのとき」。でも、いつ来るのかは誰にもわかりません。どこで、どんな風に迎えることになるか考えたことはありますか?吉川先生は参加者に問いかけます。
人生最期のときをどう迎えたいですか?
お話は人生の仕上げの時期に起きること、終末期医療や緩和ケアについての具体的な内容について続きます。療養の場(自宅、施設、医療機関、それぞれの希望と実情)、人生の最期に体や心に起こる変化(呼吸や心臓が弱くなる、脳の働きが衰え、栄養がとれなくなる、痛み・苦しさ、生き甲斐の喪失、社会との隔絶)、医療の内容(病気治療、延命治療、緩和ケアなど)について詳しく説明をしていただきました。
大切なことは、本人が医療だけではなく、生活全般で人任せにしない責任を持つこと。そして、家族や医療スタッフを含む周囲の人々とコミュニケーションをとることです。と吉川先生はお話を締めくくられました。
吉川先生のお話を伺った後、まずは少しの時間を取って、参加者それぞれが感じた感想を手元のメモに書き出します。その後、全員で話せる範囲で共有をしていきます。ここでは、身近な人との別れの時を思い出した人が多かったようです。そしてそのまま、ゆったりした時間の中で会話を続けていきます。自分自身の最期の時には、どこでどんな環境に住んでいたいか、誰からどんな医療や介護を受けたいか、余命告知や延命措置(緩和)、臓器提供について、それまでにやっておきたいこと、やり残しておきたくないこと。それぞれが思い思いに自分の気持ちを語っていました。
そしてフィナーレへ!
気付けば終了予定の時間。最後に、ワークショップ全体を振り返って、人生のはじまり、子どもの時の夢を思い出し、人生の最期を思い、じゃあ明日からどうしよう?「今」の自分と「少し先」の自分について考えてみました。自分のもやもや(課題)に目を向け、これからの目標をそれぞれが一言ずつ感想をシェアする形で、ワークショップは終了しました。
もやぴ初のイベント「人生のはじまりと終わりを考えるワークショップ」はこうして無事に終わりを迎えました。参加者からも、濃厚で贅沢な時間を過ごすことができたという感謝の言葉を、たくさんいただけました。参加者お一人ずつお見送りをしながら、イベントを企画・運営したもやぴのメンバーも、達成感と心地よい疲労感を感じることができました。
これからは、イベントに参加していただいた方全員が、もやもやぴーぷる「もやぴ」です。ぜひ、これを最後まで読んでくださった皆さんも、「もやぴ」の仲間になってください!ご参加お待ちしています。
次回はいよいよあの男が登場します。お楽しみに!
もやもや ララバイ。
もやぴの連載記事はこちらからお読みいただけます。
もやぴは、『情報誌「BALL.」』で連載もしております。