多摩エリアには、26市・3町・1村の自治体があります。それぞれの顔である市町村章をご祝儀袋の飾り紐「水引」で表現していきます。同時に市町村の特徴を見てみましょう。
市町村章を結び終わって
こんにちは、紙単衣の水引デザイナー小松です。
前回でついに多摩エリアにある26市・3町・1村の市町村章を水引で表現し終わりました。最後に、それぞれの自治体を見てきて私が気づいた多摩エリア全体の特徴や水引制作の裏話をお伝えして、この連載の結びとしたいと思います。
発表!多摩エリアの花・木・鳥
多くは住民の公募によって決定される各自治体の花、木、鳥。
多摩エリアの中で指定された数が多いものを、勝手ながら、「多摩エリアの花」「多摩エリアの木」「多摩エリアの鳥」として発表させていただきます。
多摩エリアの花:つつじ(10市が指定)
4月から6月にかけて、赤・白・紫などのあでやかな花を咲かせます。
市内の丘陵地帯に多く自生するほか、各家庭でも植えられ、親しまれています。(東大和市HPより引用)
多摩エリアの木:けやき(11市が指定)
昔から武蔵野の農家では防風林として植えられていました。
市内でも保存樹木の指定等の対象にもなっています。(東大和市HPより引用)
多摩エリアの鳥:カワセミ(4市が指定)
くちばしが尖り、体に比べ頭が大きく尾が短いことが特徴。「鳥の宝石」といわれるほど美しい姿をしています。(日野市HPより引用)
多摩エリアと関わりのある読者の皆さんは、予想通りだったでしょうか?
つつじとけやきは確かに公園や街中でよく見かけるので、私はそんなに違和感はない印象です。カワセミはあまり見たことがない気がしますが、きれいな鳥なので好印象ですね。
多摩エリアの暮らしを支える水がすごい!
多摩エリアの歴史を調べると、河川や湧水周辺で遺跡が多数発掘されています。水のあるところで人は暮らし、そこに歴史や文化が生まれているのです。
現在、多摩エリアには、400ヵ所以上の湧水スポットが確認されていて、そのうち38ヵ所が「東京の名湧水57選」に含まれています。湧水は、水路や池、川の水源となったり、農業用水として利用されたり、周囲の緑にうるおいを与えるだけでなく、災害時に私たちを助ける水の供給源になる貴重な存在です。
川や井戸水から水を汲んで生活していた頃は、伝染病で多くの人が亡くなっていました。また、人口が増加すると水が足りなくなってしまいます。そこで、安心して飲める水を安定的に供給できる仕組みを江戸時代から徐々に作りあげ、現在東京都の水道は世界有数の規模の水道へと発展しています。
今や観光名所と化している奥多摩湖や多摩湖、そして玉川上水もすべて人工的に作られた水道水のための通り道です。羽村取水堰では江戸時代の仕組みを今も利用していて、人々の知恵と技術力には驚かされるばかりです。
武蔵野市、昭島市、羽村市、檜原村は、独自の水道事業を運営していますが、それ以外の26市町は、東京都水道局が運営する都営水道を利用しています。都営水道の水は多摩川だけでなく、利根川や荒川の水も混ざっています。各自治体の水の供給元は、東京都水道局のホームページで確認できますよ。 → 東京の水道水源と浄水場別給水区域
都心まで続く水の源・奥多摩周辺の森、大小問わず川や湧水は、緑豊かで文化的な街のためにも、今後も守り続けていかなければなりません。
ついに完成! 多摩エリア30市町村章を表現した水引作品
26市・3町・1村を象徴する紋章は、並べてみるといずれも個性的ですね!普段は自分の暮らす自治体でさえ、なかなか意識して見ることがないので、作っていてとても興味深かったです。
市町村章のデザインは、特定の人物や学校に依頼して作られる場合と、全国公募で選ばれる場合があります。多くは自治体名の頭文字を図案化しているようです。
水引で装飾するときは、自治体のホームページで紹介されている市町村章の画像が、カラーであればその色をもとに作り、モノクロであれば自由に彩色しました。そして、水引らしさが伝わるように結び細工を最低ひとつは入れるルールで作りました。
元のデザインに敬意を払いながら、市の特徴を私なりに踏襲して作ったつもりですが、過剰な装飾になってしまったものもあるかもしれません。
それでも、この連載を通して多摩エリアや水引に少しでも興味を持つ人が増えてくれたら、とても嬉しいです。
2020年12月にグランデュオ立川で開催された情報誌『BALL.』VOL.2出版記念 けやき出版 POP UP SHOP内で、完成作品をすべて展示させていただきました。
多摩エリアに住んでいる方はもちろん、他の地域の方にもご覧いただき、地域の話や水引の話を語らいました。
小5の夏休みに生まれ故郷の「飯田水引」を調べたときは、伝統工芸は家元の人でないと扱えないものと思っていましたが、こうしてお世話になっている多摩エリアの真ん中で自分が作った水引作品を展示することができて感無量でした。
作品を制作した2020年は外出を控えていたので、連載を通して発見した多摩エリアの魅力的な土地や文化にまだ実際にはあまり触れられていませんが、これからゆっくり回りたいと思います。
読んでいただいた皆様、けやき出版の皆様、どうもありがとうございました。
水引デザイナー:小松 慶子(こまつ けいこ)
水引の産地・長野県飯田市生まれ。東京都八王子市育ち。小5の夏休みに自由研究で「飯田水引」と出会う。法政大学社会学部社会学科卒業。ECサイト運営会社を経て、WEBデザイナー/ディレクターとしてIT関連企業勤務中の2015年に「紙単衣 – kamihitoe -」をスタート。
2018年 独立と同時に小金井市に水引アトリエショップをオープン(2020年5月閉店)。自身でECサイトを運営する傍ら各地で水引ワークショップを開催。オリジナル商品の取り扱い店は全国に広がっている。
マーケットを意識した企画協力から、デザイン、パッケージ制作、大量生産まで一貫して引き請け、寺院の授与品や企業のPB商品、ラッピング資材、商業施設の大型ディスプレイアート制作まで幅広く手がける。
第2回 飯田水引コンテスト「飯田水引協同組合賞」受賞。
紙単衣
オンラインショップ:https://kamihitoe.theshop.jp/
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