レモンと聞いて思い浮かぶのは、鮮やかな黄色と丸みを帯びたあの姿。スーパーなどで売られているものを見ると、どれもそっくりですよね。けれど実は、レモンにもたくさんの品種があるのです。
プロでも難しいレモンの見分け
日本で栽培されているレモンの主力品種の一つは、ポルトガル原産の「リスボン」。比較的寒さに強く、1898年(明治31年)に広島県呉市に届き栽培したレモンの苗木もリスボン系だったと推測されています。もう一つは、現在広島県呉市のとびしま海道・大崎下島でも栽培されている「ビラフランカ」。これらの品種はさらに、篤農家(農法などの研究を行う農家)によって「石田系」「道谷系」などの系統に分けられ、収穫量の多さなどの優れた木が選抜されています。
そのほかにも、例えば四季を通して花を咲かせる「ユーレカ」、南米で多く生産されている「ジェノバ」、オレンジとレモンの自然交配で誕生したといわれている「メイヤー」、濃いオレンジ色が特徴的な「ヒメレモン」など、世界中にたくさんの品種が存在しています。
違う品種のレモンを比べてみると、多くの場合、ほとんど形が同じに見えることに気がつきます。レモンは、春に花が咲き夏に実が成長するものと、夏になってから花が咲き秋から冬にかけて成長するものの大きく2タイプがあります。太陽いっぱいの夏は成長のスピードが早いため実は長細く、逆に寒い季節はゆっくりと成長していくため実が丸くなる傾向に。逆に言うと、同じ季節に実をつけたレモンは品種が違っても似た形になりやすいのです。もしレモン検定があるならば、品種を見分けるのは至難の技になりそうです。
とびしま生まれのお宝レモン
とびしま海道・大崎下島にある韶果園で、25年の開発年月をかけた末に誕生し、2006年に品種登録された希少なレモンがあります。その名も“宝韶寿(ほうしょうじゅ)”。なんとも縁起の良さそうなネーミングです。レモンの需要が高まり品薄になる夏の時期に収穫できるものを作ろうと、接木での交配や肥料へのこだわりなど苦心を重ねて生み出した品種。まるでオレンジのような濃い色と真ん丸な形が特徴です。日本で品種登録されたレモンは、今のところ宝韶寿ただ一つ。街中ではまずお目にかかれないと思うと、ますます味わってみたくなります。
Member:國廣
Illustration/白木春菜