2026年3月11日(水)、下北沢のブック&イベントスペース「B&B」にて、書籍『ただいま酒場』刊行記念トークイベントを開催しました。
著者の加藤ジャンプさんと、写真を担当した写真家・衛藤キヨコさんをお迎えし、制作の裏話や取材の思い出、そして多摩という土地への思いをたっぷり語っていただきました!


2時間ノンストップのトークイベント
平日水曜日の夜にもかかわらず、酒場好きや本好き、クリエイターやカメラマンなど多くの方が集まり、開始前から賑やかな空気。イベントは、まず参加者全員で乾杯するところからスタート(本屋B&B=BOOKS&BEER、ここはお酒が飲めちゃう本屋なのです!)。そして、お2人にとっての「多摩のイメージとは?」からトークが始まりました。

ジャンプさんにとっての多摩エリアは、大学時代に国立と小平へ通っていた6年間を過ごした思い出の場所。親戚も多く住んでおり、酒場文化に触れ始めた“オフィシャルな酒場デビュー”が多摩だったといいます。中でも町田は「多摩気分じゃなくても行ける町」。地理的な区分というより、日常の延長としての多摩の距離感が語られました。

一方、衛藤さんは、本を手にした時の率直な感想として「好きな酒場がたくさんある中で、よくここまで削りましたよね」とコメントし、意識を失うかのような暑さが続く真夏に、撮り下ろしで巡った20軒の酒場取材の日々を振り返りました。焼き場で料理をする店主のすぐ近くで撮影することも多く、真夏に火の前で撮影する過酷な環境に対しては「暑さに関しては“無”」と淡々と語る姿に、会場から笑いが。
ジャンプさんは「僕なら滝のような汗ですよ。高野山の修行みたい」と冗談を飛ばしつつ、撮影中は衛藤さんの「ジャンプさんは飲んでいてください!」の言葉に誘導され、遠くから火を眺めていたといいます。すると衛藤さんからは、そんなジャンプさんの“記憶力”に驚いたというエピソードが披露されます。

メモを取らない取材スタイル
実はジャンプさんは、酒場での取材中はほとんどメモを取りません。酒場取材ということは当然飲酒が伴い、かなり酔っていることも多かったそうですが後日できあがった原稿には、その場で交わされた会話や雰囲気がしっかり書き込まれています。
「多分、記憶力が気持ち悪いんです(笑)」
そうご本人は語りますが、物や風景と結びつけて覚えていることが多いという言葉に会場からは「おお〜」といった声が。
しかし、記者時代に事件現場で警察官から記憶力を褒められたことがあるという話がある中で、「最近は若い人の顔を覚えられないんです。まちで若い子に会釈されて“僕モテてる?”と思ったら酒場の店員さんだった。僕が課金してたからだったんだなってことがあったくらい(笑)」というオチまでつき、会場は終始笑いに包まれていました。
取材の裏側を惜しみなく披露
イベント中盤では、本書に登場する酒場で撮影したアザーカット(誌面には掲載できなかった写真)をスライドで紹介しながらのトークタイム。
多摩エリアは広く、駅名になっている地域名もあって混同しやすいことから、西部・北部・南部といった名前で区切って章を構成したこと、駅が新しくなってまちの風景が変わっても酒場の雰囲気は変わらないこと、本当はもっと多くの店を紹介したかったものの、泣く泣く絞り込んだことなどが語られました。
中でも印象的なエピソードとして語られたのが、吉祥寺の「千尋」。取材当日は大雨で近くのカフェに避難していたものの、いざ取材の時間になると雨がさっと止んだそうです。
「雨上がりに行きたい店ですね」とジャンプさんが言うと、衛藤さんから「今決めましたよね?」と鋭いツッコミ。店主が顔出しを望まないため、写真では背中の姿を中心に撮影したという話も印象的でした。
(その写真はぜひ、『ただいま酒場』をご覧ください!)
また、西調布の「一心」では女将さんのおしゃべりが止まらず、1時間で人の4時間分はしゃべったのではないかと感じるほどのトークを繰り広げたり、突然粋な計らいできなこ餅が大量に出てきたり、予想以上に“硬い”ドリンクが出てきたりと、酒場ならではの濃密な時間も紹介されました。
ジャンプさんは途中、「学級崩壊とは思わないので、皆さん自由に席を立ってお酒を飲んでくださいね」と客席に呼びかけ、会場はまるで酒場のような和やかな雰囲気でした。
酒場取材のリアルに引き込まれる
最も暑かった日には、キリッと冷たいビールやホッピーが進み、酔ったまま知らない駅まで行ってしまったというエピソードも。そんな失敗談も含め、酒場取材のリアルな空気が次々と語られていきました。
イベント終盤の質疑応答では、会場から「良い酒場は、どうやって見つけているのか」という質問が。
ジャンプさんの答えは「ほぼダウジングに近い(笑)」。
特別な方法があるわけではなく、まちを歩き、店に入り、出会いを重ねていくしかないといいます。
「全然おいしくないけど、妙にしみる店もある。ポテトサラダにちくわが入っていて、お?となったり、やりとりの中からすごくいい話が聞けたりする。おしゃべりが最高ならそれで十分」。
だからこそ「ダメな酒場はない」という姿勢で向き合っているのだそうです。
イベントでファンに会える何気ない日々に感謝を
イベント当日は、3月11日。大変な出来事のあった過去を振り返りながらも、〆の言葉でジャンプさんは、この本についてこう語りました。
「酒場の本で、ここまで写真がたくさん載っている本はあまりない。臨場感をチームで作れた一冊だと思います。多摩の酒場は、自分にとって帰ってきた“ただいま”でもあり、原点でもある」。
若い頃、緊張しながら酒場の扉を開けていた自分が、少しずつ居場所を見つけていった。その経験の多くが多摩の酒場にあったのだと語りました。
気楽に話ができる場所があること、飲み仲間がいること。その積み重ねが、酒場という文化を支えている——そんな思いが伝わる言葉でした。
最後は参加者お一人ずつとしっかりおしゃべりを楽しみながらのサインタイム。
『ただいま酒場』には、この日紹介しきれなかった酒場の物語や、まちと店、人の関係が、ジャンプさんの文章と衛藤さんの写真で丁寧に収められています。ページをめくると、ふと立ち寄りたくなる酒場、誰かに話したくなる店がきっと見つかるはずです。
まだ読まれていない方はぜひ!お手に取って多摩の酒場の魅力に触れていただけたら嬉しいです!
ただいま酒場
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それぞれのただいま酒場を求めてー
「皆さんの中にあるただいま酒場を大事にしながら、新しいただいま酒場を探して欲しい」というジャンプさんの言葉に影響され、参加者の多くが「どこかで一杯飲んで帰ろうかな」と会場を後にしていたのが、とても印象的だった本イベント。
それぞれの“ただいま酒場”を大事にしたい、自分の居場所でもある新たな“ただいま酒場”に出会いたい、そう思える素敵なひとときでした。
今後もさまざまなかたちで読者の皆さまと交流できるきっかけをつくっていきますので、今回予定が合わなかった方もぜひ次の機会にお会いしましょう!
また、今回のイベントの様子は2026年6月12日(金)までアーカイブ配信も行っているので、気になる方はぜひチェックを!
https://bbarchive260311a.peatix.com/
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!


