ProjectStory#6 西日本豪雨から1年

ProjectStory#6 西日本豪雨から1年

災害からの復興

3回目の広島県呉市現地レポート。今回は、立川レモンプロジェクトが「とびしま柑橘倶楽部」とパートナーシップを結んだ理由のひとつでもある西日本豪雨からの復興についてお伝えします。

約100年前に作られた石垣の上に、土砂崩れの被害を受けた畑が広がる

2018年6月28日から7月8日にかけて、日本一のレモン生産地である広島県を含む西日本を「平成30年7月豪雨」が襲いました。広島県呉市では、観測史上最大となる72時間雨量465.0mmを記録。それまでの最大雨量は1983年の281mmだったことからも前代未聞の災害であったことがわかります。河川の反乱や洪水、土砂災害などが発生し、人的・物的に甚大な被害が各地に広がりました。
被害は当然農業にも。農林水産省の発表によると、広島県内における農林水産業の被害額は、豪雨から約10日後の7月19日時点で少なくとも118億円に上っていました(「平成30年7月豪雨による被害状況等について」農林水産省 2018年)。災害から丸一年が経とうとしている今も、復興作業は続いています。

『表から見ると目立たないのですが、裏道は片道通行だったり、まだまだ酷いところがたくさんあります。畑の作業は一番最後なので、ようやく業者が入って土砂の撤去などがはじまったところ。念願の道がやっと出来て、畑まで歩けるようになりました』と話してくださったのは、とびしま柑橘倶楽部の秦さん。とびしま海道では、畑のレモンの木や耕作放棄地に植えたばかりの苗木が流されてしまった上、あちこちの農道で土砂崩れや崖崩れが発生し、農作業に大きな被害が出ました。その影響により、その後のシーズンの収穫量は例年より3〜4割少なくなることが予想されています。

現地で案内いただいた畑は、耕作放棄地の再生に向けて手を入れていた直後に土砂崩れの直撃を受けてしまった場所。同じくとびしま柑橘倶楽部の中元さんは、『植えていたレモンの苗より雑草の方が背が高くて、ボランティアのみなさんと一緒に綺麗にしてから、ようやく土砂が畑全体に流れ込んでいたことがわかったんです』と振り返ります。

斜面にある畑の復興作業は、重機の入れる道を作り直すことからスタート
土砂の下に埋もれているのは、数ある畑の中でもとりわけ味のいい柑橘が採れる質の良い土壌

 

『これから畑を持ったり農業に関わってくれる若い人を探していますが、土砂で畑が流れたり台風で木が枯れるリスクは、不安の種ですよね。そのフォローもしっかりできるように、今から考えていくべきだと感じています』と秦さん。
とびしま柑橘倶楽部では災害発生後から、農園ボランティアの募集、義援金の受付、復興支援商品の販売などを行なっています。復興を応援したいと、仙台の飲食店経営者がレモンの購入契約に訪れたこともあったそう。農家さんのサポートという意味合いはもちろんのこと、需要が増えている国産レモンを大切に想う人からの支援が全国から集まっています。

 

災害が生む耕作放棄地

とびしま海道のレモン畑が大きな災害に見舞われたのは、実はこれがはじめてではありません。1991年9月に発生した台風19号では、最大瞬間風速毎秒50mを超える猛烈な風が吹き、塩害によって『島の全部の木が枯れるくらい』と言われるほどの被害が出ました。新しい木を植え直し続ける人もいたものの、その時点で農業から手を引く人も少なくなく、そうした畑の一部は現在、耕作放棄地となっています。

『昔は島の100%と言ってもいいほど、住むところ以外は全部ミカンやレモンの畑だったと聞いています。今はその1/4か1/5程度。ある時、農家さんに出荷できるレモンがもうないよと言われ調べてみたら、レモンの出荷量と苗木は増えているけど、下支えをするレモンの農家さんは増えるどころか減っていると気づきました』
そう話す秦さんが「黄金の島再生プロジェクト」で取り組む耕作放棄地の再生は、災害からの復興と同時に進められています。(詳細をご紹介したストーリー#5はこちら
プロジェクトに加わった広島県内の大学生たちと一緒にノコギリと鎌を持ち、最初に耕したのは10アール(1000㎡)の耕作放棄地。約50本の苗木を植え、半分程度の間引きを経て、5年後にはレモンが50kg、10年後には100kgが収穫できるようになる予定です。

ショベルカーを操り、畑を耕すレモン農家の末岡さん
苗木は風で倒れないよう1本ずつ添え木に固定する

 

島のレモン畑を未来へ

復興も耕作放棄地再生も人手が要になるものの、果樹は収入になるまで時間がかかるため、例えば、移住しても続けることが難しく出て行ってしまうケースがあるそう。しかし、最近では、普段アーティストとしてものづくりをしながら、休みの日に島の畑でレモンの木を植え、少しずつ育てる量を増やしている方がいると秦さんは言います。

『耕作放棄地再生のクラウドファンディングをした時に、畑は行けないけどお金なら贈れるよという人も、お金はないけどお手伝いなら行けるよという人もいるということを知りました。“楽しみながら”というのはこれからキーワードになってくると感じています。実際に行ったり見たり学んだりして楽しめる。そういう意味では島はその宝庫ですね』

レモンの栽培をどう継続していくのかという課題に対し、観光農園的な畑の使い方や、収穫したレモンを全て買い取る仕組みなどを検討中。また、チャレンジのひとつとして、2019年2月にはソフトウェア開発のイベント「とびしまハッカソン」が開催されました。全国からエンジニアとプランナーが集まり、遠方にいてもインターネットでレモン栽培に参加できるシステムや、農家で課題となっているレモンの仕分けを行うアプリが、2日間の開催期間中に出来上がったそう。未来に向けた様々な取り組みが進んでいます。

枝にトゲを持つレモンの収穫には手袋が欠かせない
とびしま海道ではレモンのカゴがあちこちに


Writing/國廣愛佳
Photo/寺島由里佳

TAMA WORK

ゼロから飛び込んだ、ローカルワーク1期生の話

TAMA WORK

51C(ごじゅういちしー)【BALL. HUB × Startup Hub Tokyo TAMA】 「ものづくりを仕事にする セミナー&コンペ」入賞者紹介

TAMA WORK

新生FMたちかわの新番組にけやき出版代表 小崎が出演